菊一文字草子Ep.3 :空想世界の沖田 総司①「黎明期~司馬遼太郎時代」
■黎明期
沖田 総司は昭和3年(1928年)から幕末を舞台とした作品に登場するようになります。
昭和3年は子母澤寛先生の新選組始末記(万里閣書房)が出版された年であり、『維新の京洛』というサイレント映画が公開された年です。
「池田屋での戦闘中に血を吐いて倒れ込む」という現在でもおなじみの描写もこの時点で生まれています。
そして、昭和4年(1929年)に公開された月形 陽候主演の『剣士・沖田総司』と昭和5年(1930年)公開の春見 堅太郎が沖田を演じた『大殺生』の2作品で沖田 総司=美男子というイメージが作られました。
左:月形陽候 右:春見堅太郎
■司馬遼太郎時代
「薄幸の天才美剣士」「純粋」「透明」という現在の沖田総司のイメージが定着したのは司馬遼太郎先生の新選組血風録と燃えよ剣が映像化された昭和40年(1965年)頃からだと言われています。
新選組血風録は昭和37年(1962年)5月から12月に「小説中央公論」で新選組を題材とした15編の短編を連載したものを昭和39年(1964年)に短編集としてまとめたものです。
本作と並行して、司馬遼太郎先生は新選組副長土方歳三を主人公とした長編燃えよ剣を、昭和37年(1962年11月)から昭和39年(1964年)3月にかけ『週刊文春』に連載しています。
新選組血風録は1963年(昭和38年)5月に新選組血風録 近藤勇として映画化され、昭和40年(1965年)7月11日からテレビドラマ化しました。燃えよ剣は昭和41年(1966年)に映画化しています。
新選組血風録(テレビドラマ版)で沖田総司を演じた島田順司